T.はじめに
私は、身近にある建築物や家庭用品などに含まれるアスベストが健康被害を及ぼすという事を知っており、その危険性からアスベストによる被害とそれに対する対策法に関する文献を読んだ。
U.キーワード
アスベスト、肺がん
V.選んだ論文の内容と概略
そもそもアスベストとは天然に産する鉱物繊維の事で、蛇紋石族のクリソタイル(白石綿)と角閃石族のクロシドライト(青石綿)やアモサイト(茶石綿)などがある。耐熱性、耐薬性、絶縁性などの特性に優れているために、建材、電気製品、自動車、家庭用品など、これまでに3000種を超える利用形態があったといわれている。現在、アスベスト暴露に関連あるとして確認されている疾患としては、中皮腫、肺がん、石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚が知られており、これらはいずれも空気中に浮遊するアスベストを吸入することにより発生する。そのことより、室内環境や一般環境への汚染による一般住民の健康被害のおそれに関する問題となっている。また従来の労災補償ではこれら全てが指定疾病とされてきたが、2006年3月に新たに作られた救済制度において中皮腫と肺がんのみが指定疾病となった。この事より、まずアスベスト暴露によって起こる中皮腫及び肺がんについて述べ、その後、国に先駆けて実施してきた東京都のアスベスト対策について以下に述べようと思う。
・
中皮腫の病理
中皮腫は胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜という体腔を覆う中皮細胞の存在する部位から発生する。従来は肉眼分類としてびまん型と限局型があり、それぞれに生物学的に良性と悪性の腫瘍を含む。びまん型と限局型の肉眼分類については、中皮腫の多くが発見時すでにかなり広い範囲に浸潤した状態であり、限局型と呼べる例はごく少ない。それは、悪性化した中皮細胞は奨膜表面に沿って早期から浸潤を起こしやすく、急速に周囲に進展して、胸膜では肺を覆い囲み、びまん型と呼ばれる状態になると考えられているからである。また組織分類からみると中皮細胞由来の良性腫瘍はアデノマトイド腫瘍のみとなり、悪性中皮種の分類には上皮性中皮腫や肉腫型中皮腫(線維形成型中皮腫を含む)、二相型中皮腫、そして骨や軟骨細胞に分化するもの、過形成の強い特殊型がある。
・
中皮腫の原因と発生機序
疫学的には90%以上の中皮腫患者にアスベストへの曝露歴が確認されている事から、アスベストがその原因とされている。アスベスト以外では、SV40について、そのlarge T antigeのDNA配列が中皮腫細胞のDNA中に認められる事や、トロトラストの投与や外部からの放射線照射などによる例が報告されているが、極めて限られた例である。中皮腫例の肺実質に沈着しているアスベスト繊維の種類としては、クロシドライトが最も多い。従来から鉄の含量の多いクロシドライトはアスベスト繊維の中でもっとも発がん性が高いとされ、二価鉄から三価鉄へのFenton反応による活性酸素が発がん性に関与するともいわれている。
・
アスベストによる肺がんの発生機序
アスベスト肺に合併する肺がんについては、アスベスト繊維自体の発がん性を重視する考え方が唱えられているが、疫学的にはさらに喫煙との相乗効果があるとされている。従来、細くて長いアスベスト繊維ほど発がん性が高いといわれており、実際、肺がん例の肺実質にみる繊維は種類としてはアモサイトが多い。その理由としては、アスベスト繊維の特徴の一つは強い吸着性であり、細く長い繊維はより広い表面積をもつことから担体としては有利であり、かつ気管支や肺実質に刺入する可能性も高いと考えられるからである。そのため発生機序として、大気中あるいはベンツピレンなどのタバコ中の発がん物質の担体としてアスベスト繊維が作用していると考えられる。
・アスベストへの対応
アスベストへの曝露が中皮腫及び肺がんを引き起こすことは、主として疫学的あるいは臨床的事実から明らかとなってきた。病理学的には、現在中皮腫の診断を確実に行う事が求められており、行政としては、民や建築物に対して様々な対策をとる必要がある。その対策について東京都のアスベスト対策を以下に述べる。
・都のアスベスト対策の体系
東京都では1989年5月に、都におけるアスベスト対策の基本方針を盛り込んだ「東京都アスベスト対策大網」を規定するとともに、同年12月には庁内のほとんどすべての局で構成する「東京都アスベスト対策推進会議」を設置し、全庁的な情報の共有化に努めてきた。会議内容は主として、都民への対応として相談窓口の充実化、建築物対策として解体、改修時及び廃棄時の対策強化、区市町村との連携としてアスベストの環境調査をあらためて体系化する等であり、これらの公表を行った。東京都の場合、アスベスト含有製品を製造する工場は、既に一件も都内に存在しないことから、都のアスベスト対策の中心は、建築物などに使用されたアスベスト含有建材に関するアスベストの飛散防止条約であると捉えている。以下、建築物の維持管理上での対策、建築物の解体・改修時における飛散防止対策、アスベスト廃棄物の適正処理対策に分けて、都の対策を解説する。
・
建築物の維持管理におけるアスベストの点検
2005年7月に施行された石綿障害予防規則において、建築物の壁、柱、天井などに吹き付けられた石綿等が破損、劣化などによって粉じんの飛散などのおそれがある場合には、その事業者に対して除去、封じ込め、囲い込みなどの措置を講じることが義務付けられた。そのため、民間の建築物などにおいても、アスベストを含有する吹き付け材の使用状況を点検し、その状況に応じて除去等の措置をとる必要がある。都では同年9月に、民間や地方公共団体などがアスベストを含有する吹き付け材の使用状況を点検し、状況に応じて措置」をする際に参考となるよう「民間建築物等のための建築物アスベスト点検の手引き」を作成した。その内容は各々のアスベスト含有建材に対する維持管理上の取扱いをまとめたものである。
・
建築物の解体・改修時におけるアスベスト飛散防止対策
建築物などを解体又は改修する際のアスベストの飛散防止について、大気汚染防止法で1997年より規制が開始されたが、都においては、それ以前の1995年1月から東京都公害防止条例に基づき規制を行ってきた。現在この条例の規定は、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(「環境確保条例」)に引き継がれている。都の条例では、1995年の規定開始当初から届出の対象の施設は建築物だけでなく化学プラントなどのいわゆる「工作物」も対象としてきた。大気汚染防止法に基づく規制においても、ようやく本年3月から保温材等が対象の建材となったのに加え、本年10月からは「工作物」が対象の施設となる。この大気汚染防止法の改正後の状況においても、環境確保条例における解体・改修時のアスベスト飛散防止の規定内容には以下の特徴がある。
一つ目は、吹き付け材・保温材等のみならず、硬い建材である成形板等の取り扱いについても、との告示により遵守すべき作業規準を定めている。
もう一つは、一定規模以上の届出対象の工事については、石綿濃度の測定を義務付けており、届出書において具体的な測定地点などの記載を求めている。
吹き付け材や保温材等を除去する場合には、法令及び条例によりプラスチックシートによる作業場の隔離、その隔離区間の出入り口における前室の設置、作業場の換気及び集じん、除去建材の湿潤化などアスベスト飛散防止条約が義務付けられている。これらの具体的な対策などについては、これまでも「建築物の解体等に係るアスベスト飛散防止対策マニュアル」を作成し、工事施行者などへの周知を図ってきた。
・
アスベスト廃棄物の適正処理対策
アスベスト廃棄物の適正処理については、廃棄物の排出事業者や産業廃棄物処理業者に対し「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づいて、飛散するおそれのある廃石綿等の適正処理を指導している。このほか、飛散性及び非飛散性両方のアスベスト廃棄物の適正処理のために、都独自に策定した指導指針に基づき指導を実施してきている。廃棄物処理法では廃石綿等の処理に関する業務を適切に行わせるため、吹き付けアスベスト等を排出する事業者に対し、工事現場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者の設置を義務付けている。これに加え、都では要網に基づき特別管理産業廃棄物管理責任者設置報告書の提出を義務付けている。さらに、昨年9月からは廃石綿等の適正処理について、より万全を期するため本報告書に廃石綿等処理計画書を求めている。都内から排出される飛散性アスベスト廃棄物(廃石綿等)でセメント固化し、かつ二重のプラスチック袋に入れたものについては、本年2月から都の中央防波外側埋立処分所への受入れを開始した。年間の受入れ予定量はセメント固化したもので1万トン程度あり、これは都内で排出される飛散性アスベスト廃棄物の全量を受入れることが可能な量である。
W.選んだ論文の内容とビデオの内容から、自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察及びまとめ
我が国におけるアスベストの輸入量と全国における建築物の総着工床面積の推進から判断すると、1960年以降の高度成長期において着工された建築物が耐用年数に達することにより今後、成形板等を含めアスベスト含有建材を使用した建築材の解体件数が増加することが予想される。このことから、成形板等について建築物の解体工事におけるアスベストの飛散防止をより一層徹底するため専門家や関係者と連携していく必要があると考える。
将来医師となる上で、アスベストによる肺がんや中皮腫の患者を治すだけでなく、その原因となるアスベスト含有建築物に対し対策をとっていこうと思う。
そのためにも、ビデオにもでてきた建築会社「クボタ」のようなアスベストを使用してきた会社を世間的に明らかにし、以上に述べたような対策を行う事が重要だと考える。